【北海道自転車旅行】10日目 帯広⇒広尾 その4(大樹→広尾)

(4) 大樹→広尾

15:06 大樹市街


 久々に賑わいのある街中を走る。
 そして、ぜひとも旧大樹駅を見ておきたい。大樹駅は広尾線廃止後もしばらくバス待合所として使用され、バス待合所が道の駅コスモール大樹に移転した現在も、「北海道衛星株式会社」が所有・利用を続けているという。
 
 どの辺りに駅があったのかは具体的には分からなかったが、とにかく国道を走り続ける。すると、ある交差点で交差した道に「一般道道萌和大樹(停)線」と記されているではないか。その道に入り少し進むと、今度は「3・4・5駅前通」と記された道と交差する。その道をまっすぐ進んでいくと、旧大樹駅にたどり着いた。


▲「3・4・5駅前通」


▲前方に旧大樹駅が見えてきた


▲旧大樹駅

 所有権が北海道衛星株式会社に移った現在もなお「大樹駅」の文字が掲げられている。


▲線路こそ撤去されているものの、駅構内の姿がそのまま保存されている


▲ホーム跡の様子

 民間の所有になった今はさすがに建物内には入れないが、それでも窓越しに中を覗くと、切符売り場や改札口もそのままの状態で残っていた。


▲駅舎内の様子


▲駅前の風景。ロータリーが残り、在りし日の賑わいを思わせる。

 ただ謎なのは、この駅舎を所有しているという「北海道衛星株式会社」という会社についてである。
 駅舎の周りをぐるぐる回ってみたが、どう考えても、この駅舎内で人が仕事をしているようには見えない。一応、建物内に会社の製品や事業をPRするポスターらしきものが貼られているのは確認したが、それ以外に、会社がこの駅舎を利用していると思わせるようなものは見当たらない。本当に、ただ施設を買い取っただけのように見えるのである。
 もしかしたら、会社の経営陣の中に鉄道好きな人がいて、パス待合所の移転に伴い旧大樹駅舎が解体されるのではないかと危機感を持ち、一種のナショナルトラスト的使命感から施設と敷地を買い取ったのではないか。そんな想像をしたくなるくらい、実に美しく、駅の姿がそのまま保たれているのである。

 北海道衛星株式会社のホームページを開く。会社案内には、

『2003年4月に「道民の力で人工衛星を打ち上げよう」という掛け声のもとで北海道衛星プロジェクトを立ち上げました。その目的は、従来の国家主導の宇宙開発の体質を脱するために、超小型衛星を利用することによって、民間企業と大学を中心に「実利用可能な新しい体質の宇宙産業」を創造することにありました。
そして、その時に集まった仲間の支援のもと、モノづくりの拠点として、2004年12月7日に北海道工業大学(現・北海道科学大学)の大学発ベンチャー「北海道衛星株式会社」を設立しました。(以下略)』


 とある。なるほど、民間企業とは言っても、大学を拠点としたベンチャー企業なのだ。もしかしたらそんな会社だからこそ、駅舎の保存のような酔狂な事柄にも手を出せるのかもしれない。
 さいたま市緑区にある「ほしあい眼科」には、かつて流鉄流山線で活躍した電車のカットモデル、そして、かつて羽幌炭礦鉄道で活躍し、同線の廃止後は茨城交通湊線(現在のひたちなか海浜鉄道)に譲渡されて2009年まで活躍したキハ223号が、羽幌炭礦鉄道当時のカラーに復元された上で展示されている。これはもう完全に、この眼科の院長さんの趣味であろう。旧大樹駅舎と構内も、そんな感じで保存されているのかもしれない。
 日本の行政機関はとかく、古いものはどんどん取り壊して新しいものを造ってしまえという傾向が強く、歴史的な遺産を後世に遺していこうという意識は低いように思える。そのような中で、篤志家の目に留まった幸運な駅や車両たちが、こうして後世に受け継がれていくのだろう。

15:19 道の駅コスモール大樹


 旧大樹駅のすぐ側に隣接して、道の駅が設けられている。現在、バスターミナル機能はこちらに移転している。

15:35 石坂


 大樹の市街地を抜けると、再び農村地帯になる。ただし十勝平野の中心部とは異なり、この地方の中心は酪農・畜産業のようだ。それだけに、臭いがとてつもなくキツい。息を止めて全速力で駆け抜ける。私はにはこういう仕事はできないな、と思う。

15:44 石坂郵便局


 だんだんと陽が傾いてきた。

15:47 広尾町


 石坂を過ぎると、程なくして広尾町に入る。描かれているのはサンタクロースだ。広尾町はサンタランド事業を行うノルウェー・オスロ市(当時。現在は近郊のフログン市に移管)が認定した国外初、かつ日本唯一のサンタランドだそうである。

参考:ひろおサンタランド→「ようこそサンタランドへ」の項目参照

15:50 「広尾市街18km 浦河73km」


 今日のゴールである広尾町まで、あと1時間ちょっとでたどり着くはずだ。

16:01 豊似地区


 豊似市街にも郵便局はあるが、16時を過ぎてしまったのでここで打ち止め。あとは広尾まで走り抜けるだけだ。

16:04 「ナウマン国道」が合流


 当初の計画通りであれば、釧路からナウマン国道を経由して直接広尾入りする予定だった。台風の影響で計画は大幅に狂ってしまったが、おかげでスケジュールはゆったりしたものになったし、愛国駅や幸福駅にも立ち寄ることができた。帯広回りのコースにして良かったと思う。

16:06 豊似市街


16:17 「えりも56km 浦河90km」


 豊似市街を抜けると、距離表示から「広尾」の文字が消える。明日通過する予定のえりも・浦河までの距離が、果てしなく遠く感じる。

16:23 野塚市街


16:41


 下り坂の向こうに、広尾の市街地が見えてきた。ゴールまであと少しだ。

16:54 広尾市街


 いよいよ広尾市街に突入する。……が、肝心の旧広尾駅の場所が分からない。国道を進んでいけばそのうち着くだろう、と思っているうちに、いつの間にか町外れまで来てしまう。
 結局、駅の住所を入力して検索した結果、旧広尾駅はかなり手前……市街地の入口付近にあったことが判明。引き返す羽目になる。

17:06 旧広尾駅


 鉄道時代の駅舎が残っており、現在もバス待合所として活用されている。

          ◆

 広尾駅もまた、鉄道時代の面影を色濃く残していた。待合室内には改札口がそのまま残っているし、レールこそ撤去されて駐車場になっているものの、転轍機や「広尾駅」と記された銘板が残されている。出札口付近には、列車の到着時刻表も往時のまま掲げられていた。


▲改札口


▲ホーム跡。線路側は駐車場になっている。


▲転轍機


▲到着時刻表

 駅舎内はバス待合所として活用されているほか、約半分ほどのスペースを利用して、広尾線の歴史やゆかりの品、沿線模型の展示が行われている。


▲広尾線の各駅・沿線についての展示


▲ゆかりの品々


▲広尾線現役時代の時刻表


▲沿線模型

 かつての駅構内の一部は現在、鉄道記念公園として整備され、腕木式信号機や蒸気機関車の動輪が展示されている。


▲鉄道記念公園


▲腕木式信号機と動輪


▲駅前のバス停。広尾線代替バスとJRバス日勝線(広尾~えりも~様似)が発着する。


▲駅前ロータリーの様子

 広尾線沿線を旅してきて、かつての鉄道の遺構が本当によく残されていると感じた。無論、経年劣化により撤去されたものも少なくないし、今後も維持していこうとすればかなりの費用を要すると考えられる。観光地化した愛国駅、幸福駅はともかく、その他の地域では、いずれ遺構の解体・撤去が問題になる日が来ることは避けられないのかもしれない。
 ただ、せめてその日が来るまでは、鉄道の遺構が残っていてほしいと思う。まちが歩んできた歴史を、未来へと受け継いでいくために。

          ◇

 今日の宿は、広尾町の公式ウェブサイトに掲載されていた「ひろお館」というところである。調べてみると、それは駅のすぐ近くにあった。ただオープンしたのは2015年7月17日らしいから(参考:大樹町 高橋工務店ブログ)、いわゆる「駅前旅館」とは趣が異なる。
 正直、最初はあまり期待していなかった。まぁ1晩寝れればいいか、という程度の気持ちで来たのだが、ここがなかなかどうして、かなり良い所だったのである。部屋には必要最低限のものは揃っているし、風呂とトイレは共同だったものの、なんとこの風呂、清潔な上に一人で入ることができたのである(扉のところに「使用中」の札を掛けておく形式)。これはいい。そして客室内には、見るからに洗濯物を干す用と思しき鉄の棒が据え付けられている。ここに洗濯物を吊るして扇風機の風を当て続ければ、一晩で乾いてしまうだろう。
 とりあえず、近所にあるスーパー「フクハラ」に、今晩と明日朝の食糧を買出しに出かけ、見切り品を入手してホクホク顔で宿に戻る。そしてメールをチェックすると、北海道開発局から「解除通知」のメールが届いていた。国道235号線の日高町豊郷~厚賀間の通行止めが、今日(8月24日)午後6時をもって解除されたという通知だった。
 よかった。これで予定通り、苫小牧に抜けられる。

 これで、明後日の夕方には苫小牧に着くことが確定した。そうとなれば、帰りのフェリーも予約してしまおう。スケジュールに不透明な部分があったし、空席も十分にあったので、今まで帰りのフェリーは予約せずに保留していたのだ。スマホを持っていれば、現地からのインターネット予約も簡単だ。本当に、便利な時代になったものである。

 北海道を発つまで、あと2日。
 
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