【北海道自転車旅行】0日目 東京⇒大洗

0日目【2016年8月13日(土)】 東京(池袋)⇒大洗 約123.5km



 フェリーの出航時刻は18時30分である。事前にフェリー会社から送られてきたメールには、17時頃までに乗船手続きを済ませてほしい旨の記載があった。
 対して、我が家から大洗フェリーターミナルまでの距離は約120km。ぶっ通しで走ったとしても、8時間はかかる。不測の事態を考慮すれば、できるだけ早く到着してしまいたい。まして、今日は夏真っ盛り。最高気温は連日30度を超える日が続いている。少しでも涼しいうちに、できるだけ距離を稼いでしまいたい。
 そんなわけで、この日は朝4時に目覚まし時計をセットしておいた。日の長い季節とはいえ、午前4時ではさすがにまだ真っ暗である。
 まずは朝食をしっかりと摂る。途中で空腹に襲われてはかなわない。自転車乗りにとって、食糧はすなわち燃料である。当然、ガス欠を起こせば一歩も身動きできなくなる。

06:00 出発(椎名町)
 椎名町からは、路地裏を通り抜けて目白通りに出、そこから不忍通り⇒道灌山通り⇒明治通り⇒東向島、というルートを通って国道6号線に出る。おそらくこれが、国道6号線に出る最短経路になるはずだ。松戸方面に行く際に何度も走ったことのあるルートだから、別段新鮮なところはない。唯一違うのは、前カゴ(!)に重たい荷物を積んでいるという点だけである。そのせいでハンドルが重く、バランスが滅茶苦茶悪い。

06:51 新葛飾橋


 出発から1時間弱で、千葉県との県境に架かる新葛飾橋に到着する。この橋で江戸川を渡れば、千葉県だ。まだ7時前だが、気温はぐんぐん上昇している。
 松戸を過ぎると、私にとってはあまり馴染みのない道になる。相変わらず、千葉県内の道は走りにくい。

07:38 柏市


 国道6号線は松戸と柏の間で流山市をかすめているはずだが、流山市に入ったことに気付かないまま柏市に突入する。
 住宅地・商業地は途切れることなく、国道6号線をひたすら疾走する。それでも我孫子市に入ると、次第に周囲には自然も目に付くようになってくる。

08:21 茨城県取手市


 利根川に架かる大利根橋を渡れば、いよいよ茨城県である。出発からここまで2時間半、まずまずのペースだ。ここまで全く休憩を取らずに来たが、まだ大丈夫そうだ。
 ……はずなのだが、この辺りからどういうわけか、目に異常なまでの乾燥感を覚えるようになってくる。自転車をこぎだすと、眼鏡の隙間から入り込んでくる気流がどうにも気持ち悪い。何度目をパチパチしたりぎゅっと瞼を閉じたりしても、この乾燥感は改善するどころか、どんどん酷くなってくる。どうしたものか、と思う。
 取手市の市街地を抜けると、沿道は田んぼの中にロードサイト型店舗が時折目に付く程度の単調な風景になる。

09:01 土浦16km 石岡32km 水戸60km


 出発から丁度3時間で、早くも水戸まであと60kmというところまで来た。このペースなら、14時頃には大洗にたどり着けるかもしれない。
 程なくして、牛久市に突入。



10:00頃~10:30頃 カワチ薬品土浦南店(休憩)


 国道6号線は土浦市街ではバイパス道となるが、バイパスを走っても単調で面白くないので旧道に入り、土浦市街を走り抜ける。途中、偶然見つけたドラッグストアで30分あまり休憩。暑い中4時間も走り続けたとあって、さすがに疲労した。
 ここの洗面所で、ペットボトルに水をしっかりと充填する。飲料水は、使用済みペットボトルに水道の水を入れて持ち歩くのが安上がりでよい。節約の基本である。
 目の状態は相変わらず。しかも、顔を拭うと細かい砂のようなものがびっしりと付着してきた。目の乾燥感の原因はもしやこれなのでは……と思うが、この場ではどうしようもないので、とにかく我慢しながら前に進むほかない。

11:13 かすみがうら市


 土浦の市街地を抜けて国道6号線に合流すると、まもなく「かすみがうら市」に入る。平成の大合併で誕生したひらがな名の市だが、どうにも地理的イメージが掴みにくい。もっとも、旧名の「千代田町」と言われたとしても、全くピンとこないのだけれど。町名が鉄道の駅名になっていないのが、その一因だろうか。

11:41 石岡市


 かすみがうら市を抜けると、石岡市。市の境を流れる川は恋瀬川というそうで、恋瀬川に架かる橋からは筑波山を望むことができた。
 余談ではあるが、私は筑波山と「恋瀬川」という名前の組み合わせを見たとき、この川の名は、かつて筑波山にあったとされる「歌垣」の風習と何らかの関係があるのでは? と想像した。しかし調べてみたところ、川の名前と色恋沙汰とは実際には何の関係もなく、かつて「国府川」(こうがわ)と呼ばれていたものが「国府瀬川」(こうせがわ)となり、転じて「恋瀬川」となった……とする説が有力なようだった。「当て字」によって付けられた地名は、北海道に限らず、実は日本中に存在するのだ。

 筑波嶺の 峰より落つる みなの川 恋ぞつもりて 淵となりける (陽成院)


恋瀬川

12:33 小美玉市


 石岡市内のイオンでの20分あまりの休憩をはさみつつ、なおも国道6号線の北上を続ける。石岡市を抜けると、小美玉市。暑い上に交通量が非常に多く、走るのがしんどい。目の状態がどんどん悪化してくる。

13:11 茨城町


 ようやく茨城町に入る。茨城町を抜ければいよいよ大洗町……のはずだったが、実はこの茨城町が、とんでもなく広かったのだ。

13:34 茨城町中心部


 国道6号線と分かれて旧道に入り少し走ると、ようやく、大洗方面に向かう県道16号線との交差点を示す案内表示が見えてきた。
 県道に入ると、さすがに交通量は国道6号線よりも段違いに少ない。道も風景も鄙びたものになってくる。が、炎天下、遮るものが何もない道をダラダラと走るのはキツい。おまけに目の状態は、いよいよ悪化の一途を辿っていく。じわじわと体力と精神力が削り取られていくのを感じる。

14:10 大洗マリンタワーまで10km


 大洗マリンタワーとフェリーターミナルは比較的近い。今日の目的地までの残距離が10kmを切ったことに安堵する。15時には大洗に到着できるだろうか。
 ここから大洗鹿島線の涸沼駅付近までは、鉾田市である。もっとも市域の外れの方ではあるが。

14:21 涸沼駅付近


 遂に案内表示に「フェリーターミナル」の文字が!

14:26 大洗町


 ようやく大洗町に突入。あと一息……と思ったが、ここからしばらくの区間、道はダラダラと上り坂が続く。暑さと疲労と目の異常のトリプルパンチに加え、最後の最後で上り坂とは! しかしこの上り坂をヒーヒー言いながら進んでいる最中、大きなバイクと何台もすれ違う。時間から考えて、フェリーで北海道から帰ってきた人かもしれない。
 いよいよ「北海道」が近づいてきた――そんな思いがわき上がってくる。もっとも物理的には、まだ私は首都圏すら脱しきれていないのではあるが。

15:06 大洗駅前


 大洗駅前で「ガールズ・パンツァー」のヒロインたちと記念撮影(笑)。駅で少し休憩してから、フェリーターミナルに向かうことにする。

          ◆

 駅前の駐輪場にとりあえず自転車を止め、重い足を引きずって駅の待合室に向かう。崩れ落ちるように、待合室のベンチに腰掛ける。自転車で長距離を走ったこともあり、既に疲労困憊、立っていると足がガクガクと震える。おまけに熱中症にかかったか、頭痛さえ覚える始末である。やはり前もって体を鍛えておくべきだったか……とか、せめて前もって大洗まで来ておくべきだったか……とか思うが、今更どうしようもない。どうにかこうにか、大洗までたどり着けただけでも良しとしなければならないだろう。
 それにしても、初日からこの状態では、明日からの行程が思いやられる。

 ともあれ、フェリーターミナルに向かわなければならない。その前に、今夜と明日の食糧も仕入れておく必要もある。フェリーの船内には食堂もあるが、値段がアホみたいに高い(夕食1900円、朝食1050円也!)ので利用するわけにはいかない。スマホで近隣のスーパーマーケットを調べ、そこに向かうことにした。コンビニと違い、スーパーなら定価よりも値引きしているだろうし、運が良ければ見切り品が手に入るかもしれない。

 「エコス」というスーパーに入り、普段は滅多に食べることのない(自宅ではごはん派)パンを買い込んだ。普段は口にできないようなものを食べるのも、旅の醍醐味である。最近はレジ袋が有料のことも多いので、当然、マイバッグも持参である。
 が、少々まずいことになっている。レジに並ぶのすらしんどいのだ。

 フラフラになりながら、最後の気力を振り絞ってフェリーターミナルに向かった。目の乾燥に加え、今度は何故か、くしゃみと鼻水が止まらなくなった。乗船手続きのために並んでいる時間が、異様に長く感じた。

 とてもではないが、立っていられない。

 「旅行中止」――そんな最悪の選択肢が、一瞬、脳裏をよぎる。
 でも、ここで諦めるわけにはいかない。

 ようやく手にした、長い休みだった。
 この機会を逃したら、次はいつ長旅ができるかわからない。
 あるいは最悪、もう一生涯、旅ができなくなるかもしれない。

 やりたい事を、やり尽くすために。
 今ここで、倒れるわけにはいかないのだ。
 
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